結論:オールド・イングリッシュ・シープドッグ(通称ボブテイル)の MDR1(ABCB1)遺伝子変異は、コリーのように「有名で頻度が高い」タイプのリスクではありません。ドイツで7,378頭を調べた Gramer 等(2011, The Veterinary Journal)によれば、本犬種の変異アレル頻度は 4%——コリーの59%と比べると15分の1以下です。ところがこの「低さ」こそが、日本の飼い主にとって実務上いちばん厄介な性質になります。頻度が低い犬種は警戒リストから外れ、国内の検査ラボの対象犬種一覧にも載らないためです(実際、国内でMDR1検査を公開しているカホテクノの対象犬種リストにボブテイルは含まれていません/2026年8月時点)。一方でドイツの LABOKLIN は対象犬種に「Bobtail」を明記しています。つまり「日本のメニューに無い=この犬種には関係ない」ではありません。実害が出る場面も誤解されがちです。フィラリア予防薬の常用量は危険ではなく(米国FDAはイベルメクチン製剤のハートガードについて、MDR1変異を持つ犬でもラベル用量では安全と判断しています)、本当に避けるべきは市販の下痢止めに使われるロペラミドや、疥癬治療などで使う高用量のイベルメクチン、そして家畜用製剤の流用です。この記事は情報提供であり、診断・治療の代わりにはなりません。投薬の判断は必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
4% という数字を、コリーの59%と並べて読む
MDR1(ABCB1)変異の犬種分布を、これまででもっとも大規模に整理したのが Gramer I 等(2011, The Veterinary Journal 189巻1号 67-71頁)です。ドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのグループが、純血種6,999頭と雑種379頭、合わせて7,378頭を遺伝子型判定しました。
報告された変異アレル頻度は次のとおりです。コリー 59%、ロングヘアード・ウィペット 45%、シェットランド・シープドッグ 30%、ミニチュア・オーストラリアン・シェパード 24%、オーストラリアン・シェパード 22%、ヴェラー 17%、ホワイト・スイス・シェパード 14%、オールド・イングリッシュ・シープドッグ 4%、ボーダー・コリー 1%。
この並びの中でボブテイルは、下から2番目です。「牧羊犬グループだから危ない」という大雑把な理解が、この犬種にはうまく当てはまらないことがわかります。
ただし4%はゼロではありません。アレル頻度4%というのは、単純化すれば25頭に1本の割合で変異型の遺伝子が集団の中に存在するということです。個体単位に直すと、おおよそ13頭に1頭前後が1コピーを持つ計算になります。「珍しいから無視してよい」と言える水準ではありません。
「20頭調べて1頭も出なかった」は「いない」ではない
頻度の低い犬種でよく起きる誤読があります。小さなサンプルで変異が見つからなかったことを、「この国のこの犬種にはいない」と読み替えてしまうことです。
この落とし穴を数字で示したのが Monobe MM 等(2015, Veterinary Medicine: Research and Reports 6巻 111-117頁)です。ブラジルで7犬種を調べたこの研究には、オールド・イングリッシュ・シープドッグが20頭含まれていました。結果は、20頭すべてで変異が検出されず、頻度は0%でした。
ここで研究者は、そのまま「ブラジルのボブテイルには変異がない」とは書きませんでした。代わりに 最大変異保有率(maximum mutant prevalence, MMP)という指標を計算しています。これは「20頭調べて1頭も出なかったとしても、95%の信頼度で言えるのはせいぜい『保有率は◯%以下』までだ」という上限値です。
ボブテイルのMMPは 13.8% でした。同じ研究でボーダー・コリー3.8%、ジャーマン・シェパード5.2%、ウィペット5.4%だったのと比べて、突出して高い数字です。理由は単純で、調べた頭数が20頭と少なかったからです。
つまりこの研究が示したのは「ボブテイルは安全」ではなく、「ボブテイルは、まだ十分に調べられていない」ということでした。飼い主にとっての含意は明確です。犬種単位の統計は、目の前の1頭の遺伝子型を教えてくれません。
日本のラボの「対象犬種リスト」に、この犬種は載っていない
アオイ国内の検査サービスに申し込めば済む話だと思っていました。 森下 慧そこが日本特有の壁です。国内でMDR1を公開しているラボの対象犬種一覧に、ボブテイルは入っていません。日本国内でMDR1遺伝子検査を扱う施設はいくつかあります。ただし「対象犬種」の書かれ方に注意が必要です。
たとえば 有限会社カホテクノ(福岡県飯塚市)のMDR1遺伝子検査は、対象犬種としてコリー、ボーダー・コリー、シェットランド・シープドッグ、オーストラリアン・シェパード、イングリッシュ・シェパード、ジャーマン・シェパード、ホワイト・スイス・シェパードを挙げています。検体はEDTA全血0.2cc、所要は営業日換算で4日間と明記されていますが、オールド・イングリッシュ・シープドッグはこのリストに入っていません(2026年8月時点)。
一方、ドイツの LABOKLIN が公開している対象犬種一覧には、Bobtail(オールド・イングリッシュ・シープドッグのドイツ語圏での通称)がはっきり含まれています。同じ変異、同じ検査法なのに、国によって「対象犬種」の線引きが違うわけです。
この差は科学的な根拠の差ではなく、各国のラボが「どの犬種からの依頼を想定しているか」という運用上の線引きにすぎません。Mealey KL・Meurs KM(2008, Journal of the American Veterinary Medical Association 233巻6号 921-924頁)が北米の5,368頭を調べた研究でも、変異が確認された9犬種のひとつとしてオールド・イングリッシュ・シープドッグが明記されています。
背景には日本での飼育頭数の少なさもあります。ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種別登録頭数でオールド・イングリッシュ・シープドッグは上位に入らない希少犬種で、年間登録数は人気犬種と比べて2桁以上少ない水準です。検査ラボが対象犬種リストを作るとき、依頼が来る見込みの多い犬種から並べるのは自然な判断で、その結果この犬種は落ちやすくなります。頻度の低さと頭数の少なさが重なって、「検査導線から二重に外れる」のが日本におけるこの犬種の位置です。
制度面も押さえておきます。日本では動物の愛護及び管理に関する法律にもとづき、繁殖・販売を行う事業者は第一種動物取扱業の登録が必要で、2021年6月からは8週齢規制(生後56日を経過しない犬猫の販売等の禁止)も本格施行されています。ただし遺伝子検査の実施を繁殖者に義務づける規定はありません。つまりMDR1検査済みの親から生まれた子犬かどうかは、法令ではなく繁殖者の姿勢次第ということです。子犬を迎える際に両親のMDR1検査結果の提示を求めるのは、買い手側にできる数少ない実効的な確認手段になります。
したがって日本の飼い主が取れる現実的な経路は次の3つですが、国内の一般向けメニューはこの犬種に対して実質的に閉じていることを先に押さえておいてください。
- かかりつけの動物病院を通じて国内ラボに問い合わせる——対象犬種リストは「想定犬種」であって受託可否とは別のことが多く、EDTA全血を提出できれば受けてもらえる場合があります。まず相談するのが最短です。
- 国内の他サービスも確認する——ただし期待しすぎないでください。VEQTAの犬 遺伝性疾患DNA検査は犬種別メニュー方式で、犬種ごとに選べる項目があらかじめ決まっています。オールド・イングリッシュ・シープドッグのページで選択できるのは「DM(変性性脊髄症)」のみで、MDR-1は選択肢に出てきません(2026年8月時点)。MDR-1自体は同社が扱う項目ですが、この犬種の推奨メニューには入っていないという構図です。
- 海外ラボへ頬スワブを郵送する——後述のとおり費用と日数はかかりますが、犬種リストの問題を回避できます。
ヘテロ(キャリア)でも症状は出うる——「常染色体劣性」という説明の落とし穴
MDR1の遺伝形式は、多くの解説で常染色体劣性と書かれます。この書き方だけを読むと、「1コピーだけのキャリアは無症状で、2コピー揃った犬だけが危ない」と理解してしまいがちです。
ところが実際の記載はもう少し慎重です。LABOKLIN は遺伝形式の欄に「autosomal-rezessiv; jedoch ist auch bei Trägern mit Überempfindlichkeit zu rechnen(常染色体劣性。ただしキャリアでも過敏性は起こりうると考えるべき)」と明記しています。
理由は、この変異がタンパク質の量の問題だからです。ABCB1遺伝子が作るP糖タンパク質は、脳の血管の内側に並んで薬を脳から汲み出すポンプとして働いています。変異は4塩基の欠失によって読み枠がずれ、ポンプが途中で作られなくなるものです。
2コピー持つ犬ではポンプがほぼゼロになります。1コピーの犬ではおおむね半分が残ります。半分あれば通常の投薬では足りますが、ポンプの能力を超える量の薬が入れば、キャリアでも脳内濃度は上がります。「劣性だから安全」ではなく、「劣性だから余裕が半分」と理解するのが実態に近い読み方です。
この構図を最初に明らかにしたのが Mealey KL 等(2001, Pharmacogenetics 11巻8号 727-733頁)で、ワシントン州立大学のグループがイベルメクチン感受性コリーからこの4塩基欠失を同定しました。MDR1をめぐる話は、すべてこの論文から始まっています。
本当に危ない薬は「フィラリア予防薬」ではない
アオイでは毎月のフィラリア予防薬をやめたほうがいいのでしょうか。 森下 慧逆です。予防用量は安全と判断されています。やめるほうがフィラリア感染のリスクで危険になります。MDR1の話でもっとも多い誤解が、ここです。「イベルメクチンが危ない」と聞いてフィラリア予防を中断してしまう飼い主がいますが、これは危険な判断です。
ワシントン州立大学が公開している MDR1の問題薬リストでは、イベルメクチン製剤のハートガードについて「FDAはMDR1変異を持つ犬に対しても、ラベル用量での使用は安全と判断した」と明記されています。フィラリア予防に使う量は、体重1kgあたり6マイクログラム前後という極めて少ない量だからです。
危険域はまったく別の桁にあります。LABOKLIN の記載によれば、変異を持つ犬は150マイクログラム/kgで神経毒性が現れうるのに対し、変異のない犬は2,000マイクログラム/kgまで臨床症状なく耐えられます。安全域におよそ13倍の差があるということです。
そのうえで、同リストが挙げている実務的な区分を整理します。
- 避けるべき——ロペラミド(人用の市販下痢止めの主成分)。WSUは「神経毒性を起こす」としてAVOIDと明示しています。人の薬箱から犬に与えてしまう事故が最も起きやすいのがこれです。
- 用量の相談が必要——アセプロマジン、ブトルファノール、マロピタント、オンダンセトロン、シクロスポリン、グラピプラント、各種の抗がん剤。
- ラベル用量なら安全とされているもの——モキシデクチン、セラメクチン、アフォキソラネル、フルララネル、ロチラネル、サロラネル。ノミ・マダニ薬の多くはこちらに入ります。
加えて注意したいのが家畜用製剤の流用です。牛や馬用のイベルメクチン製剤は濃度が桁違いに高く、体重換算を誤れば一気に危険域へ入ります。実際、ホワイト・スイス・シェパードでこの変異が見つかった経緯そのものが、Geyer 等(2007, Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics)が報告したドラメクチン(牛などの家畜用に承認された駆虫薬)による中毒例でした。犬用として承認された薬ではなく、家畜用製剤が犬に転用された結果だったのです。
日本で検査を受ける——費用感と日数の目安
費用の全体像を、日本の飼い主の視点で組み立ててみます。
国内ラボ経由の場合、多くは動物病院を通した受託になります。カホテクノの例では検体がEDTA全血0.2ccなので、病院での採血が前提です。したがって費用は「検査料+診察料+採血手技料」の合計になり、病院ごとに設定が異なります。検査料そのものは病院を通じた見積りで確認するのが確実です。所要は同社の記載で営業日換算4日間とされています。
海外ラボへ郵送する場合の目安は次のとおりです。ワシントン州立大学の MDR1検査は70米ドル(1ドル150円換算でおよそ1万500円)。検体は頬スワブまたは血液で、スワブなら飼い主が自宅で採取できます。月曜受領分は水曜午後(米国太平洋時間)に結果という運用です。同大学の検査には、獣医薬理学の専門医に投薬の質問をオンラインで送れる仕組みが付いている点が、単なる遺伝子型判定との差になっています。
これに国際郵便の実費が加わります。EMSや国際eパケットでおおむね1,500〜3,000円程度、往復の日数を含めると申し込みから結果まで2〜4週間を見込むのが現実的です。LABOKLIN(ドイツ)は検体受領後3〜5営業日で結果としており、こちらもボブテイルを対象犬種に含んでいます。
国内の価格水準の目安としては、VEQTAが公表している犬の遺伝性疾患DNA検査の税込価格が参考になります。1項目 4,950円、2項目 9,350円、3項目 13,200円、4項目 16,500円といった刻みで、項目を増やすほど1項目あたりの単価が下がる設計です(セット割の場合)。ただし前述のとおり、この犬種のメニューにMDR-1は含まれていません。国内でMDR1を受けるなら動物病院経由でラボに個別相談する形になり、そこに診察料と採血手技料が上乗せされます。動物医療は自由診療で公定価格が無く、これらは全額自己負担です。
支払い手段も国内外で違います。国内ラボ経由なら動物病院の窓口で現金・クレジットカード・各種QR決済が使えるのが普通です。一方海外ラボへ直接申し込む場合、決済は Visa / Mastercard などの国際ブランドのクレジットカードか PayPal に限られるのが一般的で、PayPay・楽天ペイ等の国内QR決済は使えません。加えてカード会社の海外事務手数料(おおむね1.6〜2.2%)と、為替レートの変動が上乗せされます。海外送金や代行業者を挟むとさらに費用がかさむため、国際ブランドのカードを1枚用意しておくのが最も安上がりです。なお動物由来検体を国際郵送する際は、税関告知書に内容品を正しく記載する必要があるので、発送前に郵便局または各社の案内で申告方法を確認してください。
価格・対象犬種・所要日数は変わりうるため、必ず各社の公式ページで最新の条件をご確認ください。
ペット保険は「遺伝子検査」と「薬の副作用」をどう扱うか
アオイペット保険に入っているので、検査費用も出ると思っていました。 森下 慧そこは分けて考える必要があります。予防目的の検査は一般に対象外で、副作用の治療費とは別の扱いです。日本のペット保険(アニコム損害保険、アイペット損害保険など)を使う場面は、MDR1に関して2つに分かれます。
ひとつめは遺伝子検査そのものの費用です。これは治療ではなく予防・体質確認を目的とした検査にあたるため、一般的な国内のペット保険では補償の対象外とされるのが通例です。健康診断・ワクチン・去勢避妊などと同じ扱いになります。
ふたつめは、薬剤の有害反応が起きてしまったときの治療費です。中毒症状に対する入院・点滴・脂質乳剤療法などは、通常は「病気やケガの治療」として補償対象になりうる領域です。ただしここで確認すべき条項が2つあります。
- 先天性・遺伝性疾患の免責——約款によっては先天異常や遺伝性疾患に起因する治療を除外している場合があります。MDR1変異は「疾患」ではなく薬物動態の体質であり、生じた中毒は薬剤性の急性疾患ですが、条項の書きぶりは各社で異なります。
- 契約前発症・告知の扱い——加入前にすでに遺伝子検査で変異が判明していた場合の告知義務の範囲。
- 待機期間——国内のペット保険には契約開始から30日前後の待機期間が設けられているのが一般的で、この間に発生した傷病は補償対象外になります。「加入した翌日から使える」わけではない点に注意してください。
結論としては、加入中の保険会社の約款で「先天性異常」「遺伝性疾患」「予防を目的とする費用」「待機期間」の4語を検索して読むのが最短です。判断に迷う場合は、契約者向けの問い合わせ窓口で「MDR1遺伝子検査の費用」と「薬剤性中毒の治療費」を分けて確認してください。
受診導線——かかりつけから、どこへつなぐか
日本の動物医療はかかりつけの一次診療施設が入口で、そこから必要に応じて二次診療施設へ紹介される仕組みです。MDR1に関して、この導線をどう使うかを整理します。
平時(症状がないとき)は、かかりつけで十分です。伝えるべきことは次の3点に絞られます。(1) 犬種がオールド・イングリッシュ・シープドッグであること、(2) この犬種がMDR1変異の報告犬種であること、(3) 遺伝子検査を希望する、または未検査であること。カルテに「MDR1未検査/要注意犬種」と記載してもらうだけでも、麻酔や鎮静を伴う処置のときの安全性が変わります。
実際に薬を入れたあと様子がおかしいときは緊急です。ふらつき、瞳孔の散大、よだれ、嘔吐、見えていない様子、極端な傾眠、震え——これらが投薬後数時間から1〜2日で出た場合は、与えた薬の外箱またはシートを持ってすぐに受診してください。成分名と量がわかることが治療方針に直結します。
二次診療が必要になる場面は、重度の神経症状が出て集中管理や脂質乳剤療法が要るときです。大学附属の動物医療センターや、神経科・救急を掲げる二次診療施設が対象になります。二次診療施設は原則としてかかりつけからの紹介制なので、まずかかりつけに連絡し、紹介状(診療情報提供書)を出してもらう流れになります。夜間であれば地域の夜間救急動物病院が窓口です。
なお、遺伝子検査の結果は「陰性証明」ではなく「投薬設計の材料」です。クリア(変異なし)と出ても、体重換算の誤りや他の薬物相互作用による事故は起こります。検査結果は、獣医師と共有してはじめて意味を持ちます。
よくある質問
Q. オールド・イングリッシュ・シープドッグは頻度4%と低いのに、検査する意味はありますか。
あります。頻度は集団の性質であって、目の前の1頭の遺伝子型ではないからです。むしろ低頻度犬種は「対象外」と見なされて警戒されにくいぶん、麻酔や高用量の駆虫薬の場面で事故が起きやすくなります。1回の検査結果は生涯有効です。
Q. フィラリア予防薬は中止すべきですか。
いいえ。米国FDAはイベルメクチン製剤のハートガードについて、MDR1変異を持つ犬でもラベル用量なら安全と判断しています。自己判断での中止はフィラリア感染という別のリスクを招きます。変更の要否は必ず獣医師に相談してください。
Q. 市販の下痢止めを少しだけ与えるのも危険ですか。
ロペラミドを含む製品は避けてください。ワシントン州立大学は問題薬リストでロペラミドを「神経毒性を起こす」としてAVOIDと分類しています。人用の薬を犬に転用しないことが、この犬種では特に重要です。
Q. キャリア(1コピー)なら安心してよいですか。
安心はできません。LABOKLINは遺伝形式について「常染色体劣性。ただしキャリアでも過敏性は起こりうる」と明記しています。ポンプの能力が半分になっている状態と理解し、麻酔や高用量投薬の際は獣医師に遺伝子型を伝えてください。
Q. 日本のラボの対象犬種に載っていないのに、検査を受けられますか。
受けられる可能性があります。対象犬種リストは「想定される依頼犬種」であって受託可否とは別のことが多いためです。まずかかりつけの動物病院を通じて問い合わせ、難しい場合は海外ラボへの頬スワブ郵送という選択肢があります。
Q. 検査は何歳から受けられますか。
遺伝子型は生涯変わらないため、年齢の制約は基本的にありません。子犬のうちに一度受けておけば、その後の麻酔・去勢避妊手術・駆虫の設計にそのまま使えます。
参考文献
- Mealey KL, Bentjen SA, Gay JM, Cantor GH. Ivermectin sensitivity in collies is associated with a deletion mutation of the mdr1 gene. Pharmacogenetics. 2001;11(8):727-733. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11692082/
- Gramer I, Leidolf R, Döring B, et al. Breed distribution of the nt230(del4) MDR1 mutation in dogs. The Veterinary Journal. 2011;189(1):67-71. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20655253/
- Mealey KL, Meurs KM. Breed distribution of the ABCB1-1Delta (multidrug sensitivity) polymorphism among dogs undergoing ABCB1 genotyping. Journal of the American Veterinary Medical Association. 2008;233(6):921-924. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18795852/
- Monobe MM, Araujo Junior JP, Lunsford KV, Silva RC, Bulla C. Frequency of the MDR1 mutant allele associated with multidrug sensitivity in dogs from Brazil. Veterinary Medicine: Research and Reports. 2015;6:111-117. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30101099/
- Firdova Z, Turnova E, Bielikova M, Turna J, Dudas A. The prevalence of ABCB1:c.227_230delATAG mutation in affected dog breeds from European countries. Research in Veterinary Science. 2016;106:89-92. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27234542/
- Washington State University, Washington Animal Disease Diagnostic Laboratory. MDR1 in Dogs — Problem Medications. https://waddl.vetmed.wsu.edu/mdr1-in-dogs/
- LABOKLIN. MDR1-Genvariante (Ivermectin-Überempfindlichkeit). https://laboklin.de/de/leistungen/genetik/erbkrankheiten/hund/mdr1-genvariante-ivermectin-ueberempfindlichkeit/
- 有限会社カホテクノ. MDR1遺伝子検査. https://www.kahotechno.co.jp/mdr1/
検査で調べるには
ペットのDNA検査には遺伝性疾患のキャリア(保因)やリスク指標を含むものがありますが、結果は「情報」であって診断ではありません。気になる症状や確定診断が必要な場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
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